もっと最初から思い知っておけば良かったと泣くほどに、















ぼろぼろ、
ぼたぼた、

馬鹿みたいに溢れる涙がアリババの頬を濡らしていく。本人にも止めようが無いのだと感じるその泣き方に、ジャーファルはただ痛ましげに眉をひそめた。



「アリババくん…」

「ッひ、…ぅ、ぐ…ぅう」

「泣かないで下さい…」



惑うように揺れるジャーファルの手は確かにアリババの背を擦っている筈なのに、目の前に佇む少年の実態も実体も掴めない焦燥感に心を焼かれた。



「…そんなに、嫌ですか」



私が、シンの傍らにあることが…
言葉にせずとも確かにアリババには理解が出来て、だからこそより一層嗚咽が止まらなかった。

そうじゃない。
そうではなくて。

それでも言葉は紡げなくて、不要な涙やみっともない喘ぎは出てくるのにと、アリババはどうしようもなく自分という存在を痛め付けてやりたくなった。



(嗚呼、嗚呼、どうしてなぜどうしてこうもどうしてどうして…)



ジャーファルに優しく背を擦られる度に心臓の裏側が熱を持って痛みを傷みを訴えてくる。孕まぬ言葉に悩まされ、情けなくて情けなくて消えたくなる。

ああ早く早く何かをちゃんと、きちんと言わなければ…言わなければいけないのに。

アリババは今、優しい目の前の人物が怖くて仕方がなくなっていた。溢れる涙を拭う手と、溢れる涙が歪ませる景色に感謝をするほどに怖かった。…怖かった。


そうですかと静かに呟くひとが、……怖かった。







「…だから、きみは泣くんですね」



優しいゆえに無理をして、
明るいゆえに涙する、




「やっぱり私は…きみを好きになれてよかった…」




ハッと伏せていた顔を上げれば擦る手と同じほどに優しい表情があって、またアリババの目から水分が溢れる。…けれど理由の変わったそれに傷みを覚えることはなく、アリババはようやくジャーファルに触れることが出来た。



















ひたり、と壊れ物を扱うように添えられる手は少し冷たい。けれどその優しい触れかたに篭る温度の温かさにアリババは何度だって泣かされてしまうのだ。


「っ、ん…ん、ぁ」


体内に宿る熱さえ緩やかに気遣いをみせるのだから堪らない。


「ふ…っ、じゃ、ふぁる…さ…んん、」


寄せられる唇の柔らかさこそが、お互いの傷つきやすくも尊いものなのだと。

キスをひとつ、
キスをふたつ、
キスをみっつ、

離れてはくっついて、くっついては離れて。引かれ惹かれる力はきっとだって、恋といえるはず。


「すきですよ…アリババくん」


俺もすきですあなたのことが。
言葉にしなくても伝わるそれらに、やっぱりアリババは涙を零す。それにだって柔く苦笑しては撫でてくれるジャーファルは、やっぱりどうしたってアリババの大切なひとだった。





大好きな…ひとだった。














(耳を澄ませばきっと答えてくれるから)




***


早さん様、この度は50000打企画にご参加下さり誠にありがとうございました!

ジャファアリでアリババ君がシンドバットさん相手に嫉妬をしてアリババ君が泣いてしまいジャーファルさんが優しく慰めて最後はバカップルで裏アリ…との事でしたが、いかがでしょうか?エロが温すぎて申し訳ないです…相当雰囲気文なのも申し訳ないです…更に消化が遅くて本当に本当にすみません!リクエストありがとうございました。すみません!(土下座)

それでは本当にありがとうございました!!


(針山うみこ)